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楽譜   演奏会見聞録

05年3月6日

山形弦楽四重奏団

ポール・デルヴォーという画家の展覧会を開催中の美術館で、弦楽四重奏の演奏があるというので、日曜日の午後いそいそと出かけていった。
折しも大雪のあとで天窓から青空がのぞき、大理石の柱に支えられた吹き抜けの下はのびのびとした空間になっていた。ヘンリー・ムアの「母と子・腕」の脇のソファに陣取り、仮設の客席を見ると120席に立ち見も出て200人という観衆だった。

マリノ・マリーニのブロンズ像「騎手」を背景に、カルテットが登場。
左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの順に並ぶ、はじめて見る配置。ふだん演奏している山形交響楽団での並び方かもしれない。ヴァイオリンが両側から鳴り交わすのが楽しみだ。

最初はモーツァルトの「小夜曲」。
なぜか急ぐ。余計なものをつけないで走る感じ。お互いの音を取れないのか、ところどころで楽句の出だしに乱れがでるが、「疾走する悲しみ」ならぬ疾走する楽しさ。ヴィオラのパートが伸びやかな音で、そこここを締めていた。

2曲目のハイドン、第2楽章のアダージョが伸びやかな歌を響かせると演奏もどっしりと落ち着いた。あ、空調が。楽器の響きが騒がしく聞こえたのは空調の排気音のせいだ。低声部が響きすぎる会場に慣れたこともあるのだろう、バランスがよくなってくる。
観客も目の前の音楽に集中しようとしているのか楽章毎の拍手もなくなり、やっと落ち着いた演奏会となった。
気になっていた空調が4楽章で停止、ずっと続いてほしいような活気のあるメロディーの繰りかえしが整理されて聞こえるようになる。ハイドンの茶目っ気が楽しい。

後半は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交代、きびきびとリードしていた前半の第1ヴァイオリンが内声部の充実にまわり、柔軟に支えていた前半の第2ヴァイオリンが伸びやかに歌うことができる力を発揮すべくリードにまわったということのようだ。

フランクのラルゲットはヴァイオリンの嘆きの歌を内声部が厚く支える、心が引き込まれるような曲。展覧会のポール・デルヴォーがベルギー出身という縁でフランクが演奏されたらしいが、これは今日の発見、楽しみがまたできてしまった・・・今度全曲を聴いてみよう。
ボロディンのノクターンは、深夜のラジオ番組のテーマに使われたこともある甘酸っぱい夏の夜のような曲。
後半の2曲で四重奏団は隙のないアンサンブルで気持ちのこもった演奏をたっぷりと聴かせてくれた。

後半親しみやすい曲が選ばれたのは親しみやすい軽い演奏会というねらいからだろうが、気持ちのよい明るい響きで楽しく聴くことができた。
アンコールには「冬のソナタ」のテーマ。山形交響楽団の地域にとけ込んだ日常の活動からの選曲だろう。
美術館のサロンで気楽で楽しいばかりではなく、音楽の芯に触れることもできるいいコンサートだった。

それにしても、空調をつけたまま演奏会を始めたこと、腕章を着けた職員(もしかして学芸員?)が演奏中にフラッシュをたいて写真を撮影していたこと、演奏の前に館長さん?のできれば聴きたくないお役所風のあいさつがあったこと、曲間に楽員にマイクを持たせて話をさせ、休憩開始のアナウンスまで楽員にさせたことなどなど、音楽を大事にしているとはとてもいいがたい運営で、文化を扱っている施設のそれこそ文化の質が疑われた。建物を建てて美術品をお金で買って、まわってくる展覧会を開催すれば美術館の一丁上がりと考えたりはしていないでしょうね。

ミュージアム・コンサート
2005年3月6日日曜日午後2時開演
福島県立美術館エントランスホール

山形弦楽四重奏団
中島光之 ヴァイオリン
駒込綾 ヴァイオリン
倉田譲 ヴィオラ
茂木明人 チェロ

プログラム
モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジーク
ハイドン 弦楽四重奏曲二長調Op.64-5「ひばり」
フランク 弦楽四重奏曲二長調より第三楽章
ボロディン 弦楽四重奏曲二長調より第三楽章「ノクターン」
エルガー 「愛の挨拶」
日本の歌より「春よ来い」「おぼろ月夜」
サウンド・オブ・ミュージック・メドレー