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楽譜   演奏会見聞録

06年1月8日

ウィーン舞踏会管弦楽団 ニューイヤー・コンサート

バレエ付きのウィンナ・ワルツ! 厳寒の雪の中、いつもより年齢に余裕のある聴衆に囲まれて、心が浮き立つお正月のコンサート。

「ジンタ」という言葉を知っていますか。「『ジンタカタッタ』と聞こえる演奏音に基づくか。」と岩波国語辞典にあります。底に鎖が張ってあって、ジャンジャンという音がいっしょに響く小太鼓(「スネアドラム」というらしい)が懐かしい、チンドン屋のあの感じです。
「航空兵行進曲」の小太鼓のはずむリズムと、異動してシロフォンを鳴らすティンパニ奏者。いいぞ、その調子。お正月ののお屠蘇をいただくようです。
日本オペレッタ協会会長寺崎裕則氏のパンフレット解説も楽しい。

2曲目「ウィーンの森の物語」でバレエ登場。6人のメンバーで、男女3人ずつ、このあとも入れ替わり登場する。
男性に支えられてふわりと浮かび上がるのや、片足を高く上げ裾をたなびかせるので、またまたうっとり。ウィーンからのテレビ中継と同じ。テレビと違うのは、体重が感じられることや、しっかり力が入っているのにそう見せない技術。現物でないとわからない。
同じかたちで3人が足を上げるときに、それぞれかたちやタイミングが違う。これは、テレビでなじんだ国立歌劇場のバレエも、今年のテレビでのハンブルグのバレエも同じ。ヨーロッパの伝統? 一糸乱れず踊ることより、それぞれが自分が感じる美しさを表現することが目標なのだろう。だから同じかたちにならない。それぞれの踊り手が観客に与える印象というところで統一されるということだろうか。

3曲目のレハールでソプラノ登場。大きな身振りと明るい声、好感溢れる舞台の人という印象。お客さん大喜び。

「加速度円舞曲」。いまは亡きカルロス・クライバーがウィーンフィルの新年コンサートを2回指揮し、その1回目89年の最初の曲がこの曲でした。指揮棒一閃、音が輝きリズムが躍動したことでした。
その印象があるからでしょうか。音の動きに体がつい動いてしまいます。客席のあちこちでも頭や肩が動いていました。

第1部の最後は「美しく青きドナウ」。
ウィーンフィルの新年コンサートでは毎年アンコールに演奏される。アンコールなのに、中継でバレエの映像が流れたのはカラヤンの年だったかしら。そのころは第1部はFMラジオで、第2部は教育テレビ。中継が伸びると途中で終わったこともあった。その昔が信じられないような今年の総合テレビの3時間の放送。放送を見るのが初めてというゲストがいたり、教養番組といった構成で、中途半端な構成だった。毎年の休憩時の楽しみだったオーストリア放送協会製作の観光ビデオは今年は見ることができなかった。(NHKとはちょっとばかし、番組のつくりが違うんですよ、これが。それぞれのショットの感性と、光線や角度といった撮影技術・・・)

休憩後は「金と銀」のバレエ、颯爽とした「雷鳴と稲妻」と気持ちよい演奏が続く。
「インディゴと40人の盗賊」を聞いて「ジャンニ・スキッキ」の「わたしのお父さん」を思いだしていた。楽しむための音楽は数知れない。人の喜びとなぐさめの歴史は音楽とともにあった。その場に流れている音楽で多くの人が感情をともにすることができる。

「トリッチ・トラッチ・ポルカ」ではそれぞれ待ち人をしている男女が恋に落ちるという楽しい演出のバレエ、向こうの劇場ではおきまりの演出かもしれないが、バレエを見ることがほとんどない身としては新鮮。指揮者もバレエに合わせてとぼけた視線を送ったり、行儀のよい指揮者もこれは定番の演出なのだろう。

「皇帝円舞曲」は着実なテンポで演奏される。舞踏会のオーケストラだから、踊りやすいのがいちばんということだろうか。てらわず格調高い演奏で、指揮者の資質が現れていた。あたたかく幸せな一晩でした。

ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団
ニューイヤー・コンサート2006
2006年1月8日日曜日18時開演
福島市音楽堂大ホール

ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団
指揮 ウヴェ・タイマー
ソプラノ イザベラ・ラブーダ
ウィーン・フォルクスオーパー・バレエ

ヘルマン・ドスタル:航空兵行進曲〜オペレッタ『天駆ける騎兵隊』より
ヨハン・シュトラウスII:「ウィーンの森の物語」 作品325
フランツ・レハール:「私、恋に落ちたの」〜オペレッタ『世界は美しい』より
ヨゼフ・ランナー:タランテラギャロップ 作品125
ヨハン・シュトラウスII:ワルツ「加速度円舞曲」作品234
エメリッヒ・カールマン:「ハイアー、ハイアー、山こそ我が故郷」〜オペレッタ『チャールダーシュの女王』より
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『憂いもなく』作品271
ヨハン・シュトラウスII:ワルツ「美しく青きドナウ」作品314
フランツ・レハール:ワルツ「金と銀」 作品79
ヨハン・シュトラウスII:ポルカ「雷鳴と稲妻」 作品324
ヨハン・シュトラウスII:オペレッタ『インディゴと40人の盗賊』より間奏曲
フランツ・レハール:「熱き口づけ」〜オペレッタ『ジュディッタ』より
エメリッヒ・カールマン:軽騎兵マーチ〜オペレッタ『サーカス・妃殿下』より
ヨハン・シュトラウスII:「トリッチ・トラッチ・ポルカ」作品214
ヨハン・シュトラウスII:ワルツ「皇帝円舞曲」作品437
ローベルト・シュトルツ:ウィーンは夜がいちばん美しい〜オペレッタ『春のパレード』より