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楽譜   演奏会見聞録

14年10月11日

弘源寺木管五重奏団

稲荷神社のお祭りで青空が少年たちまで晴れやかにして出店をにぎやかにしていました。スペインの空を思いながらセビリヤの理髪師を。
ゆっくり始まったテンポでセビリヤもずっと田舎のほうののんびりしたところ、あの颯爽としたロッシーニ・クレッシェンドは楽しめるや如何と。心配するほどもなく、速度が自然に上がるように楽譜が書かれているんでしょうか、快活なオペラの幕開きでした。ファゴットの尊師は眉毛が長くなって僧正の格が出てきたような。(奏者は楽団の名前になっている弘源寺のご住職なのです。)

ボロディンは夜想曲の第二楽章かと早とちりしていたら、第一楽章。韃靼人の踊りのようなところもあると解説があった。
冒頭ファゴットからオーボエが揺揺と、フルートがしっとりと、遠くを望むような音の交錯。弦楽四重奏と比べると、グリッサンドの交差が大きな弧を描くようで有機的というのか、南方熊楠の本を読んでいたせいか粘菌の成長とか、いのちの発生とかそんな事まで思わせるような。

くるみ割り人形のおはなしの筋の説明があった。曲は何度も聴いているのに、おはなしの勉強はまるでしていなくて、はじめて聴いてびっくり。王子の誕生のときにねずみの女王が人間に踏み殺されてその呪いで王子がくるみ割り人形にされてしまう…誰が思いついたんだろうというようなおはなしです。知ってました?
アラビアの踊りとか中国の踊りとか19世紀って今よりも音楽の世界が広いんじゃないか、いまどきクラシックを聴く人は民俗音楽を馬鹿にするよねえ。もとの音楽を聴いて西洋クラシック音楽に仕立てた技術というのはやっぱり天才的だ。あんがい世界は狭かった。西洋音楽でもトルコ風味、アラビア風味、19世紀終わり、帝国主義というんだったか、そういう時代があった。

花のワルツ。フルートのきらびやかさ、ファゴットの歌い回しが人なつかしくて、オーボエが切なくって。

こうもり。ホルンが色っぽく感じて、カルロス・クライバーの演奏を思い出したり。官能っていうのは演奏にあるのではなく、きっと楽譜にあるんだ。タラターラタラターラ、ファゴット紅潮、もっと色っぽく!お坊さんの限界か知らん、などと不謹慎な。

ピツィカート・ポルカ、観光列車。景色が移ろい行く走馬灯のような楽しみ。テレヴィも映画もなくても楽しい。旅は楽しみ、演奏会も楽しみ、いまの人は欲ばり。

エジプト行進曲はスエズ運河の開通のお祝いの作曲、ペルシャ行進曲、ロシア皇帝臨席の演奏会でロシアと親交の深かったペルシャを題材にした。ペルシャ行進曲では男性コーラスがあるが、すこし遠慮しているみたいな、気恥ずかしさがあるのか知らん。
アンコールはポルカ、クラップフェンの森で。前にも聴いたことがある郭公笛、雲雀笛。
もう一曲は「花は咲く」、みなさんおなじみ、演奏も壷を押さえたようで、歌謡ショーのよう。

10月11日土曜日14時開演
福島テルサFTホール
白鹿山弘源寺木管五重奏団第17回室内楽演奏会

白鹿山弘源寺木管五重奏団
フルート 宮崎真
オーボエ 早水楼蘭
クラリネット 添田麻紀子
ホルン 湯田公夫
ファゴット 高木昭道

ロッシーニ:歌劇「セビリアの理髪師」序曲
ボロディン:弦楽四重奏曲第2番ニ長調第1楽章 Allegro moderato
チャイコフスキー:バレエ組曲「くるみ割り人形」Op.71aより
・行進曲 ・こんぺい糖の踊り ・トレパック ・アラビアの踊り ・中国の踊り ・あし笛の踊り ・花のワルツ
J.シュトラウス2世:オペレッタ「こうもり」序曲 Op.362
J.シュトラウス2世:トリッチ・トラッチ・ポルカ Op.214
シュトラウス兄弟:ピチカート・ポルカ
J.シュトラウス2世:ポルカ「観光列車」 Op.281
J.シュトラウス2世:ペルシャ行進曲 Op.289
J.シュトラウス2世:エジプト行進曲 Op.335