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楽譜   演奏会見聞録

07年5月20日

弘源寺木管五重奏団

 「ラヴェル ピアノと木管五重奏のための六重奏曲 組曲 マ・メール・ロア 亡き王女のためのパヴァーヌ ほか」というチラシに惹かれて、日曜日の午後の街中に出かけました。
 いただいたプログラムではラヴェルだけでなくプーランクが載っていました。むかしレコードでオーボエソナタを好んで聴いたんです。つい頬がゆるんでしまいました。

 1曲目はそのプーランク。ピアノの客演を得て、オーボエとファゴット(バスーン)との三重奏曲です。
 不協和音のピアノに導かれてバスーンがのんびりと歌い、細めのオーボエの音が引き継ぎます。異国風のラメント=嘆き歌が夕空に伸びていくように歌われます。1曲目から風景が浮かんできたのは、プーランクと私の間に共通する感情があるのでしょうか。アンダンテではバスーン主導のパストラル=田園風景がひろがり、だんだん色を濃くして憂いが顔をのぞかせます。ロンドは風変わりな行進曲。音が飛び跳ね、ずり上がり、生きることの楽しみ、喜び、そんな感じがしました。
 楽しむところの多い音楽でした。

 2曲目のラヴェル「ソナチネ」は木管だけの五重奏でした。ところどころで「ダフネスとクロエ」を思い出させる響きが聞こえます。ぼんやりした感じに聞こえたのは、脈動が感じられないからでしょうか。あまり楽しめませんでした。
 「ピアノ原曲を聴いていると、ちょっと涙がこぼれそうになります」というプログラムの文章に惹かれて、あとでレコードを聴きました。夢見るような親密さ、とでもいえばいいでしょうか。こういう音楽で人と共感したいものです。

 ホルンがのどやかに舞う「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、いにしえの宝物。遠いところに連れて行ってくれる。このままどこまでもついていきたい。
 ゆったりと進む音の流れは、一歩一歩踏みしめて歩く速さ。ピアノがいれば隠れてしまうようなかすかなまとまりが、途切れない強さ。
 「マ・メール・ロワ」、時間は均一ではない。ゆっくりと足を進めるのは豹? アンリ・ルソーの絵のイメージが頭に浮かぶ。マ・メール・ロワ=マザー・グース、そう、おとぎ話の世界です。ただし、ラヴェルのおとぎ話は昼、日が高いうちのの話ではありませんが。

 この五重奏団のおかげで、フランス音楽の楽しさがよみがえりました。これだから、無料のコンサートは恐ろしい。これからは常連になります。

 アンコールはプーランクの「ノヴェレッテ」。プーランクの皮肉っぽい、不良じみた感じになじんでいたので、この曲のように、素直で快活、小学校の校庭の長谷川健太のような、爽やかな感じにびっくりしました。好きな作曲家だなどと十年早い、「勉強して出直して参ります」。
 ふたたびのアンコールは、フォーレ「ペレアスとメリザンド」から「シシリアーノ」。ここ数年折に触れ聴いていたフォーレ、なかでも、懐かしさに胸がいっぱいになってしまうこの曲を聴くことができるとは思いませんでした。夢見るようなあこがれ、そして希望。
 

弘源寺木管五重奏団第10回室内楽演奏会
2007年5月20日日曜日14時開演
福島テルサFTホール

弘源寺木管五重奏団
宮崎真(フルート)
早水楼蘭(オーボエ)
湯田公夫(ホルン)
高木昭道(バスーン)
添田麻紀子(クラリネット)

鈴木桂子(ピアノ)

プーランク:ピアノ、オーボエとバッソンのための三重奏曲
ラヴェル:ソナチネ
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル:マ・メール・ロワ
(眠りの森の美女のパヴァーヌ-おやゆび小僧-パゴダの女王レドロネット-美女と野獣の対話- 妖精の園)