演奏会見聞録
03年10月9日 イ・ムジチ合奏団 |
響いた瞬間のヴァイオリンの音が、ホールの天井に染みこむ順番を待って高いところでうろうろするのがこのホールのいつもの鳴り方なのに、今夜のヴァイオリンはとまどいもなく耳に飛び込んでくる。強い輝きでたっぷりと歌う。太めの弦を強く張って同じ音の高さにすると輝きが強くなるというが、そんなことはしないだろうから、やっぱり技術、そして響きの趣味。明るく強い響きが好きな聴衆? 演奏家自身? ああ、イタリア、こういう音の好きな人たちの間に生まれたらもっと違った生き方があったのに。 脳天気な天才ロッシーニ、輝く響きとクレッシェンド、前半はいろんな作曲家のロッシーニ讃。代わる代わる、若いメンバーがソロを務めるが、みんな名人。この合奏団はソリストの集団で、優秀なソリストが集まれば当然アンサンブルの精度は高くなるという成り立ち。ここのチェリストが作曲して自分でソロをとったファンタジーは長すぎて飽きたが、ヴィオラの曲、パガニーニのG線のヴァイオリンの曲はすっかりひきこまれてしまった。 後半の四季はソロヴァイオリンとチェロの掛け合いに惚れ惚れとした。「イ・ムジチ」の四季という伝統の逸品になっていた。 あちらの料理はスパゲッティがスープ代わりで、次々とコース料理が運ばれてくるらしい。この夜のコンサートもまるでフルコースのように、さまざまな色の輝きが次から次へと目の前を横切りすっかり満足。気分はすっかりイタリア、たっぷりの料理を楽しませてもらいました。 アンコールを求める拍手に百戦錬磨のおじいさんという感じのコントラバスが「アンコール・・言わない」、何を演奏するかと思っていたら、ディーリアスを思わせる前奏に続いて山田耕筰の「赤とんぼ」、夕焼け小やけのあの曲です。とってもロマンチック、感傷を誘う懐かしい響きでした。日本風とばかり思っていた山田耕筰のメロディーも、ヨーロッパ音楽が身体にしみこんだ人の作曲なんだと思いを新たにした。(「日本の四季」というレコードでは藤掛廣幸編曲となっているが、あちらはソロオーボエが入っており、この夜の編曲が同じ人によるものかどうかは不明)
小希月の贅沢な夜の楽しみでした。 イ・ムジチ合奏団 ●ロッシーニ:弦楽のためのソナタ第1番ト長調 ●ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」
◆コンサートマスター アントニオ・サルヴァトーレ |