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楽譜   演奏会見聞録

17年11月26日

ムジカ・レアーレ

モーツァルトのホルン五重奏曲って馴染みのない曲です。クラリネット五重奏曲とか弦楽五重奏曲は何度も聴いたのに。演奏者が並んだら、ヴァイオリンの右となりは波木井さん、ヴィオラの人です。ホルンの他はヴァイオリン1人にヴィオラ2人、チェロ1人という構成なわけで、めずらしいなあ、と。モーツァルトがヴィオラを弾いたというのは読んだことがありましたが、好きだったのかしら。
ホルンのあったかい響きと弦楽の軽い明るい響きがよくなじみます。ヴァイオリンとホルンが歌い交わすところから、オペラみたいだなあと。後半ホルンの節に半音階の動きが多くあらわれます。そのなめらかさが快感で、モーツァルトのひらめきなのか、ホルンの技巧なのか、いい気持ちにさせてくれます。
第二楽章アンダンテ、ヴァイオリンの伴奏オブリガード付きのアリアというところでしょうか。低音弦の静かな波に乗っているゴンドラ。
第三楽章アレグロのロンド。フォークダンスの軽やかさ。シルクのドレスがきらめくような弦に乗って、酔っ払いの大声のようなホルン、自在に歌います。終了直前にヴァイオリンの旋律をヴィオラが追いかけ、それをチェロが追いかけるという受け渡しがあって、音が目に見えるようで快感でした。

ダールという作曲家の名は初めてでした。
「コンチェルト・ア・トレ」という名前のとおりの三人の合奏曲。ヴァイオリン、チェロ、クラリネット。今度の曲ではヴァイオリンは内藤淳子さんのようです。
ペトルーシュカ? と思ったぐらい、風変わりだけれどなじめるということではストラヴィンスキー風の、何人かが次々に別のことを言うというようなということではバレエ風の曲です。「兵士の物語」を思い出したのはクラリネットのせいかもしれません。
ヴァイオリンとチェロのピツィカートで始まる牧歌、クラリネットの嘆き歌。クラリネットの歩くようなタンギングで始まるヴァイオリンの哀歌。クラリネットの慟哭。聴きどころ満載です。
急緩急の三つの部分に分かれるせいでしょうか、構成がわかりやすく、ストラヴィンスキーのとりとめのなさと対照的でした。

後半はドヴォルザーク。弦楽四重奏にヴィオラが一人追加された五重奏曲です。左からヴァイオリン1、2、ヴィオラ1、2、チェロ。第一ヴァイオリンは内藤さん、第一ヴィオラは波木井さん。
ヴィオラの夕方の陽射しのようなのどかな旋律から、これは序奏なのかしら、チェロが引き継ぎます。第二ヴァイオリンにアメリカ四重奏曲風の楽句が出て第一ヴァイオリンに引き継がれたり、なつかしいような歌の切れ端がいくつも出てきました。
第二楽章は野外のお祭りでしょうか。民族舞踊のステップかな。弾むリズムがくぐもって聞こえるのはふたつのヴィオラでこの音域を強調したかったのでしょうか。渋い好みですね。中ほどで切々とヴィオラが歌います。ジプシー、でしょうか、後ろ髪引かれるような。この旋律がヴァイオリンに移ると皮相に聞こえるのは高いかすれ音のせいでしょうか、ジプシーの悲哀でしょうか。
第三楽章ラルゲット。ヴィオラが先導してヴァイオリンが嘆き歌を、ヴィオラの先導からヴァイオリンがトリルやピツィカート、とかヴィオラが活躍する楽章でした。落ち着きと哀歌が入り混じっています。悲愴な楽句で燃え上がったりもしますが、落ち着いた悲しみ、という印象でした。望郷とかいうことではないのでしょう、人間は結局ひとりだ、と作曲家がつぶやいたような気がします。変奏曲はひとを昔に引き戻すものでしょうか。
第四楽章アレグロ・ジュスト。一転してポルカのような飛び跳ねる踊りです。親密で、あこがれもあって揺れるようなうねるような、それで快活です。ジュストはきちんと、とか、正確、とかいう意味ですが、はしゃぎ過ぎるなよ、ということかなあと。

ムジカ・レアーレの楽員たちは演奏会に先立って学生オーケストラの指導を行ったということで、プログラムの前に、楽員たちが学生たちに混じって、モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調KV622の第二楽章アダージョと、ホルン協奏曲ニ長調KV412の第一楽章アレグロを演奏しました。弦の擦過音がさわやかでフルートやファゴットがいい音を出していました。
ムジカ・レアーレのアンコールは「夕焼小焼」、五人の弦とクラリネット、ホルン、全員演奏というわけです。
最後は学生オーケストラが再登場、ラデツキー行進曲、「音楽都市こおりやま市民音楽祭」というわけでした。

2017年11月26日日曜日14時開演
郡山市民文化センター中ホール
ムジカ・レアーレ

ムジカ・レアーレ
ヴァイオリン シルヴィア・フアン
ヴァイオリン 内藤淳子
ヴィオラ 波木井賢
ヴィオラ 金丸葉子
チェロ タチアナ・ヴァシリエヴァ
クラリネット アルノ・ピターズ
ホルン フォンス・フェルスパンドンク

モーツァルト:ホルン五重奏曲変ホ長調KV407
ダール:コンチェルト・ア・トレ
ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲変ホ長調作品97