きみがいなければ
きみがいなければ
出口は見つからなかった、ベイブ
足もとさえ不確かだった
さみしくて落ち込んでいた
きみがいなければ
きみがいなければ
ベイブ、横になって目を開けて
じっと待つと 明け方の光が
部屋をまぶしく染めていく
この新しい感じに気がつかない
きみがいなければ
きみなしでは
ぼくの空は天から落ち
雨はすぐに土砂降り
きみの愛なしにぼくのいる場所はなく
さまようだけ きみなしでは
きみはわかってるはずだけど
きみなしでは
空は天から落ち
雨はすぐに土砂降り
きみの愛なしにぼくのいる場所はなく
ああ どうすればいい
きみなしでは
きみがいなければ
冬のあとに春はなく
コマドリの歌も聞こえず
糸口が見つからず
たしかな手応えもない
きみがいなければ

セミが鳴いていた日
ああ ベンチを染める涙と汗
小鳥たちは木々を飛び渡る。
言いたいこともなく会話もなしに
登壇して学位を受けた。
遠くで蝉が歌っていて
そう 美しい曲に聞こえたっけ。
ああ 遠くで蝉が歌っていて
そう 蝉は歌っていた 私のために。
建物の中で審査員たちが話すのが見えた
まわりは暗く墓場の匂いがした。
あとは帰るだけ 歩き始めていた
ところが部屋にあかりが見えた。
蝉が鳴いた そう ぞっとする思い
ああ 美しい曲に聞こえたんだ。
蝉たちの高い声の悲しいトリル
そう 蝉は歌っていた 私のために。
門の外ではトラックが荷下ろしの最中
暑い日で30度はあったかな。
そばに立っていた男 頭が爆発しそうだ
かけらが落ちてこないように私は祈った。
遠くで蝉が歌っていて
そう 美しい曲に聞こえたっけ。
ああ 遠くで蝉が歌っていて
そう 蝉は歌っていた 私のために。
ローブを脱いで学位記を置いて
恋人を乗せドライヴに出かけた。
山に向かって ダコタのブラックヒルズ
生きて逃れられて本当によかった。
蝉が鳴いた そう ぞっとする思い
ああ 美しい曲に聞こえたんだ。
蝉たちの高い声の悲しいトリル
そう 蝉は歌っていた 私のために。

時がゆっくり過ぎる
時はゆっくり過ぎる ここ山の中では
橋で腰を下ろしたり湧き水のそばをたどったり
小川の浅瀬で魚を捕まえたり
時はゆっくり過ぎる 夢の中の迷子には
恋人がいたんだ 明るく器量よしの
お母さんが料理する台所に腰を掛けて
窓越しにずっと高くの星を眺めたっけ
時はゆっくりすぎる 惑う恋人には
行ったりしなくていい 馬車で町に
行ったりしなくていい 市場にも
行ったりしなくていい 坂のある道を
行ったりしなくていい どんなとこにも
時はゆっくりすぎる ここ日なたでは
まっすぐ前を向いて心がけを堅くしていられる
光の中で花開く夏の薔薇のように
時はゆっくりすぎる 日が暮れていく

ジプシーに会いに出かけた
ジプシーに会いに出かけた
でかいホテルに泊まっていたっけ
ほほえんで迎えてくれた
「さあ さあ さあ」と言いながら
暗くて混み合った部屋
抑えた明かりではっきりしない
「ごきげんかい」と言われて
同じ言葉でごあいさつ
降りたロビーを
出て電話をと思ったが
美女のダンサーが
大声で言うには
「もう一度ジプシーに会わなきゃだめ
ねじを巻いてくれるの 後ろから
引きずり出してくれるの おそれから
裏側に引きずり込むの 鏡から
ラス・ヴェガスでやってみせたし
きっとここでもするんだから」
表通りのライトはまぶしく
光に映えるのは涙の川
遠くで見つめる私の
耳に音楽が届いてくる
ジプシーに会いに戻った
夜明けも近い頃だった
ドアを開け広げて
ジプシーは出かけた後だった
さっきの美女のダンサーはといえば
やっぱり姿は見えない
そうこうして日の出を眺めていたんだ
ミネソタの小さい町でのこと

冬の間奏曲
冬歌 冬歌 ねえ聞いてよ
今夜道ばたの冬歌
もめごとは起こらない今日の晩
すべては正しい場所に収まる
ほら天使がそばに来た
訳もなく愛が輝きはしない
あこがれのきみに来てほしい与えてほしい
それで冬歌 君がいいんだと俺っちは思うんだけど
冬歌 冬歌 僕の小さなリンゴ
冬歌 畑のトウモロコシ
冬歌 ふたりで教会に出かけなくちゃ
食べるのは帰ってきてからだ
さあ出てこいよ スケートリンクがまぶしいよ
夕日に映えて 交差点の標識に寄り添って
冷たい雪 僕らの熱い恋
冬歌 僕のものになれ
冬歌 冬歌 僕の小さなデイジー
冬歌 電話線のそばで
冬歌 熱っぽくなる僕
来いよ 薪の火のそばに
月の光が窓に映って
粉雪が砂地を覆う
出てこいよ今夜 何もかもがきっちりしている
冬歌 君が偉大だとこの俺っちは思うんだけど

犬が走り回るなら
犬が走り回るなら 俺たちだって
突っ切れないか 急勾配のこの平原を
シンフォニーが聞こえてくる
二匹のロバ、列車、そして雨の音
最高のものは一番最後にあらわれる
そう教えてもらわなかったかい
自分にかまけた方がいい 王にだってなれる
犬が走り回るなら
犬が走り回るなら 俺だって
抜けられないか 時の沼地を
俺の心が紡ぐシンフォニー
そして韻文のつづれおりを
ああ 風が誰彼に広める俺の噂
流れていこうがとどまろうが
ひとりひとりには 通じないまま
犬が走り回るなら
犬が走り回るなら 成るべきものは
成るものなり それだけのこと
真の愛は草の葉ひとひらを
まっすぐ高く立てるはず
宇宙の海原 調和の中で
真の愛に連れはいらない
魂を治療しまったき存在となる
犬が走り回るなら

始まりの朝
聞こえてくる 七面鳥のときの声
道を横切る走る兎
橋の下を流れていく川
しあわせだよ 君の笑顔に会えて
空の青さの下で
この始まりの朝 始まりの朝
この始まりの朝に君とふたり
聞こえてくる モーターのうなり
オートバイが流行ってきたんだ
転がしてくる 1マイル 2マイル
しあわせだよ 君の笑顔に会えて
空の青さの下で
この始まりの朝 始まりの朝
この始まりの朝に君とふたり
夜が明けていくのの早いこと
いつもそうだね 君といるときは
肌で感じる 明るい日差し
グラウンドホッグが小川のそばを走る
夢が全部叶うのはこんな日に決まっている
生きてあることのしあわせ
空の青さの下で
この始まりの朝 始まりの朝
この始まりの朝に君とふたり
生きてあることのしあわせ
空の青さの下で
この始まりの朝 始まりの朝
この始まりの朝に君とふたり
始まりの朝

窓の書き置き
窓の書き置き 「淋しい」
ドアの書き置き 「同伴禁止」
道の書き置き 「しばらないでくれ」
ポーチの書き置き 「三人旅一人乞食」
ポーチの書き置き 「三人旅一人乞食」
彼女は彼とカリフォルニアへ行った
彼女は彼と生き方を変えた
私の親友は言った 「教えておくよ
ブライトンの娘たちは月みたいだ
ブライトンの娘たちは月みたいだ」
雨のようだ
今夜は大通りで濡れてしまう
雪になりませんように
ユタに小屋がほしい
結婚して ニジマスを捕る
子供は大勢がいい 「パ」と呼ばせる
それですべてのはずだけれど
それですべてのはずだけれど

次の金曜日は
滑って転んで イタチが走るようだ
おめかししてのデートなら楽しめるはず
次の金曜日は 君と次の金曜日
次の金曜日は 必ず次の金曜日
こっちの船に降りて来いよ ハニー 甲板まで
海原をひとっ飛び 言い出すと思っていたよね
次の金曜日は 君と次の金曜日
次の金曜日は 必ず次の金曜日
夜をやり過ごして
明日は本気で一日過ごす
すべてがうまく進む
君は見てればいい
知らないどこかへ行くんだ
子供たちは留守番させて
ハニー ほら出かけようよ
君と僕とで
そっちだこっちだと森のウサギのように
君といるのがうれしい イェイ 見栄えもするし
次の金曜日は 君と次の金曜日
次の金曜日は 必ず(絶対だよ!)次の金曜日
干し草にまぎれ込んだ針でも 君を見つけ出す いつか
どうしようもなくいかした女だ こんなのに出会ったことがない かつて
次の金曜日は 君と次の金曜日
次の金曜日は 必ず次の金曜日

もう一人のぼく
もう一人のぼくが何でもしてしまう
お礼を請求されたことはないけれど
君みたいな女の人と
探検に出かけるんだ もう一人のぼくを
嵐が吹き荒れるドアの外
辛抱はもうやめた方が良さそうだ
君みたいな女の人と
見つけに出かけるんだ もう一人のぼくを
でも なんていい気分なんだ
気がつけば君がもう近くまで
心はふわふわなんだ
つま先から耳の先まで
もう一人のぼくがときどき隠れてしまう
機械の中に押し込められるのが心配なのかな
君みたいな女の人と
探検に出かけるんだ もう一人のぼくを

天使が3人
天使が3人 大通りに浮かんで
角笛を吹きならし
緑のローブから羽根を突きだし
クリスマスの朝からずっといる
モンタナのきちがい猫がひらめいたと思いきや
オレンジがまぶしいドレスの貴婦人の登場
U-ホールのロゴのトレーラーが1台と車輪のないトラックが1台
10番街のバスが西へと向かい
犬と鳩は舞い上がってはうろつき回る
バッジの男が忙しく通れば
仕事に戻る3人連れはのろのろ歩き
誰も立ち止まらない 不思議に思わない
パン屋のトラックが止まったわきのフェンスの上
竿の高いところには天使が立っている
運転手が見ようとのぞく天使の顔は
目に見える世界に似合わず情愛に満ちて
天使は日暮らし角笛を鳴らし
地上は目に見えず移ろっていく
天使の音楽は誰の耳にも届かず
誰一人耳を向けようともしない

夜を統べる神
神 夜を統べ 神 昼を統べ
神 闇を除き
神 鳥を飛ばしめ
虹を空に配し
神 孤独と苦痛
神は愛 神は雨
神 夜を統べ 神 昼を統べ
神は黒色 神は白色
神 山の高みを重ね
雲を空にかたち為し
神は時 神は夢
神 大河浅水を撓ます
神は種 神は麦
神は冷にして熱
神は気 神は樹
我らが心と思いに宿る
神は瞬間 神は時代
神 敬にして讃えられるべき
