したいことはひとつだけ
競争する気はさらさらない
やっつけない だまさない いじめない
解釈しない 分類しない
否定しない 反抗しない さらし者にしない
したいことはひとつだけ
つきあいたいんだ
ちがうって 争うとかいうのと
おどかすとか いらだたすとか
引きずりおろすとか 疲れさすとか
困らすとか くじけさすとか
したいことはひとつだけ
つきあいたいんだ
前をふさぐつもりはないとも
ビリッとも ガツンとも バチンとも
分析も 分類も
結論付けも 忠告も
したいことはひとつだけ
つきあいたいんだ
まじめくさったりしない
競走したり 追走したり 追跡したり 捜索したり
訴追したり 追放したり
制限したり 監禁したり
したいことはひとつだけ
つきあいたいんだ
ご家族に会う気はないし
困らせないし だまさない
選別しないし 解剖しない
点検しないし 拒否しない
したいことはひとつだけ
つきあいたいんだ
いんちきなんてするもんか
連れ出すか 無理強いするか 見捨てるか
共有の感情なんて期待するもんか
共通の理解か 行動の協調か
したいことはひとつだけ
つきあいたいんだ
カラスは黒いのブルース
目が覚めてぼんやりしている朝
まいっているし ばてている
目が覚めてぼんやりしている朝
まいっているし ばてている
とうの昔に別れたあの子が
来て教えてくれないかな
何がどうなっているんだか
脇道で
看板がカタカタ鳴ってる
脇道で
看板がカタカタ鳴ってる
腕時計はしてないのに
神経が騒いで
ちくちく 音を刻んでる
ほしいものがあったら ベイビイ
言えよ
ほしいものがあったら ベイビイ
言えよ
来ればいいんだ いつでも
夜中でも 昼間でも
どんなときでも
思うときがある
高く昇りすぎて戻れない
思うときがある
高く昇りすぎて戻れない
でもこう思うときもある
こんな低いところにいる
訳がわからない
野原で黒いカラスが
横切る街道
野原で黒いカラスが
横切る街道
相棒 どう?
俺は間違えられそうかい
いまどきのかかし
スパニッシュハーレムのできごと
ジプシーのギャル ハーレムの掌が
熱くてつかみきれない
熱を下げられない
お前が歩くと路地は炎
俺は家なし 連れて行け
おまえのがらがら太鼓が聞こえるところへ
ベイビイ 見てくれよ 俺の運勢
この気まぐれな手のひらで
ジプシーのギャル お前に取り込まれちまった
こんなに深く落っこちた俺
すばやく切れ味のいい真珠の目
きらめくダイヤモンドの歯並び
夜はタールの黒 俺のこの
なまっちょろい顔を夜向きにしてくれ
教えてくれ ベイビイ 知りたいんだ ベイビイ
おまえが最後の命綱なんだ
ずっと落ちつかないんだ
お前にめぐりあってから
いつ気が変わるか 崖の上
目の前にお前がいるがここはどこだ
圧倒されて 人が変わって
こわばって中途半端に笑う俺
知りたいんだ ベイビイ 俺は好みかい
でないと 俺は正気じゃいられない
自由の鐘
夕陽が沈みきって調子はずれの真夜中の鐘が鳴るまでの長い時間
落雷を避けて逃げ込んだ家の中
稲妻が音を立ててあたり一帯の闇を突き刺していた
自由の鐘の閃光
戦う気力を失った戦士達を鼓舞する閃光
着の身着のまま逃げる難民の行く手を照らす閃光
そこここを敗走する兵士の夜の道を照らす閃光
そして私たちが見つめていた自由の鐘の閃光
都市は灼熱のかまど 考えもなしに見つめていた
堅牢な外壁の裏に隠されたもうひとつの表情
結婚式の鐘の音の響く中 嵐は近づき
稲妻の早鐘にかき消されていく
反抗する者のための鐘 放蕩者のための鐘
不遇な人のため 見捨てられ見放された人のための鐘
追放された人 火刑を前にした人のための鐘
そして私たちが見つめていた自由の鐘の閃光
過激な神秘主義の鉄槌があられとなって襲いかかる
天空は地上の賛嘆に耳を塞ぎ 驚異が白日のものとなる
教会堂から鐘が引きはがされ 吹き飛ばされる
あとに響く稲妻の早鐘 そして雷鳴
穏やかな人のためにうち鳴らされ 思いやりの人のためにうち鳴らされ
理性の擁護者と後援者のためにうち鳴らされ
そして質請けに間に合わなかった絵描きのために
そして私たちが見つめていた自由の鐘の閃光
大聖堂の嵐の夜 雨が暴く作り話の嘘
地位を追われた顔のない裸の人影のために
思うことを声にできず
日和見の形勢に黙るしかない口の代わりに響く
聾者と盲人に代わって響き 唖者に代わって響き
虐待を受ける者 友なき母親 誤って呼ばれる娼婦に代わって響き
非道の無頼 逃亡者 逃げおおせた者の代わりとして
そして私たちが見つめていた自由の鐘の閃光
空の片隅で雲の白いカーテンがはためくと
霧雨を降らしてみるみる広がっていく
電光は矢となって突き刺さり火を注ぐ
逃れられるのは放浪を運命とする者たちそして踏みとどまった者たち
押し黙って道を求める注意深い人たちのために響き
人知れず寂しい思いの恋人たちのために響き
ひっそりと穏やかな無実の囚人たちのために響き
そして私たちが見つめていた自由の鐘の閃光
思い出すとあのころは理想に燃えて笑っていた
漠然とした不安にとらわれてから何もできないまま
音を聞きただながめて時を過ごし
響きがやむまで虚ろな心で口を噤んでいた
癒えない痛みに耐える人たちのために響き
困惑した人 非難を受ける人 酷使される人 困憊した人 そして幾多の不幸な人
世界中あらゆる場所の希望を失った人たちのために響き
そして私たちが見つめていた自由の鐘の閃光
自由になるには 第10章
俺は人並み ごく普通
あいつと同類 君とも共通
俺とみんなは親子で兄弟
誰ともどこも違っていない
話しをされても何もできない
人ができないことは俺もできない
シャドウ・ボクシングしていた朝っぱら
カシアス・クレイ戦の準備にもっぱら
どっこい カシアス・クレイ 参ったか
26 27 28 29 俺みたいな顔になりたいか
5 4 3 2 1 カシアス・クレイ 逃げないか
99 100 101 102 ママにも見分けがつかない顔
14 15 16 17 18 19 脾臓がつぶれるきれいなKO
よくは知らない聞いた話
天国じゃ道路は金の轍
世の中もっとひどくなるのか
真っ先に到着するのがソ連だったら
なんてこった 怖い話だ
俺はリベラル 程度はともかく
みんなに自由をと理想は高く
バリー・ゴールドウォーター あの有名な
俺の娘と結婚したくて隣に引っ越すと思いな
そんなことさせるやつは阿呆
キューバの農場全部と交換でも答えはNo
猿を丸太に上げ
しないとだめだぞ 犬の真似
尻尾を振って頭をゆらして
始めたのは 猫の真似
見事だモンキー 最高にファンキー
足にはハイヒールのスニーカー
テニスの順番を待ってた 真っ昼間
白のパンツで腹の上までくるみ
カツラの頭は髪を垂らし
テニスコートは立ち入り禁止
女ができた かなりの意地悪
俺のブーツを洗濯機に入れる
裸の俺を散弾で責める
料理に風船ガムを混ぜる
あやしい 金にいやしい 声はやさしい
俺の友だちの毎日の習慣
ボウイナイフで突き刺す 俺の写真
俺の首をスカーフで絞めるのが望み
俺の名前が出るとへどを吐くふり
そんな友だちが百万人
なんと詩の朗読のご依頼
教会の女性交流会
圧倒されて舞い上がり
会長さんが場をまとめてやっと終わり
わーい 俺は詩人だぞ どんなもんだい
もう呼んでもらえない
髪をかかとまで伸ばして目立ちたい
まるで歩く山岳地帯
馬でオマハに乗り付けて
カントリークラブとかゴルフコースとか繰り出して
ニューヨークタイムズ抱えてラウンド みんなこんがらがって
やっぱり変だとわかるかい
この歌はそんなのばっかり
それより訳がわからない
何のための歌なんだい
役に立たない歌
イギリスで覚えた歌
ラモーナに
ラモーナ 俺のそばで
濡れた瞼をゆっくり閉じろ
痛むほどの悲しみも
自分を取り戻す中で消えろ
街では花は
生命の息吹 それとも 彼岸への誘い
何かの役に立つんだろうか
人の死について考える真面目さが
うまく説明はできないが
ひび割れた唇が純真
キスしたい気持ちは真剣
強気な見かけの陰に入っていくんだ
やることすべてに引きつけられて
目を離すなんてできるもんか
やりきれないよ 愛しくて
見ていると 君がしようとしているのは
ありもしない世界の部品になることだ
そんなの夢だぞ ベイビイ
中身のない 誰かの策略だ ベイビイ
そいつのせいで悲しくなっているんじゃないか
見ると 君の頭は
苦痛に歪み 絶え間なく
口から流れ出す泡
そうだよ 君は心乱れ
とどまるつもり それとも
南部へ帰るつもり
思いこんでいたよね
ゴールはすぐそこだと
だが君ほど強い者はいない
誰も君を負かせない
自分を追い込まないことだよ
君が何度も言ってた
取り柄なんて何にもないと
でも人よりはまだましさ
まだそんな風に考えられるんだから
気がつけよ
得るものは何もないが失うものもない
きまりごと おしつけ そして仲間づきあいが
君の悲しみのもと
あおり立てられ 型にはめられ
信じこむようになる
みんな考えることは同じだと
ずっと君と話していたいのに
言葉はすぐに
始める無意味な空回り
心の隅で声がささやく
何の助けにもならない
すべては過ぎ去り
すべては移り変わり
目の前のことをかたづけていくだけ
またいつか
ベイビイ 気がつくと
そばで俺が声を上げて泣いているかもしれないよ
バイク狂いの悪夢
農家の戸をドンドン叩く
寝る場所を探していたんだ
くたびれ果てた 怖いものなし
遠く もっと遠くと飛ばしてきたんだ
おいおい 誰か
誰かいないのか
戸口で待つ
ひどく寂しい気持ちだった
来た 農場の親爺が
狂ったやつが来たと思ったんだろう
一目見るなり
銃で狙いをつけた
崩れるように
膝をついて
悪い者ではない
撃たないでくれ
ライフルの撃鉄に手をかけ
大声を出す
旅のセールスマンだってか
あの噂の
違う 違う 違うって
医者なんだ 嘘じゃない
まじめな若者だ
学生なんだ
娘が出てきて
呼ばれた名前がリタ
この顔は見たことがある
「甘い生活」ドルチェ・ヴィタ
とっさに仲良くしようと思った
彼女の親父と
ぺらぺらと なんて
手入れがいいんだと
そしたら 医者のお前に
何がわかる 何がいいんだ
私の生まれは 願いがかなうトレビの泉
爪の垢を見て
わかったようだ 嘘ではないと
あんた 疲れてるんだろ
やさしい態度
そうなんです 1万マイルも
運転しました
泊まっていけ
暖炉のそばに寝るといい
ひとつだけ約束だ
すぐ床につけ
娘に手を触れるな
朝起きたら搾乳の仕事だ
ネズミのように眠った
物音で目を覚ますと
リタがそばにいた
トニー・パーキンスの表情で
シャワーを浴びたほうがいいわ
案内するから
いいんだ
もうひと眠り済んだんだ
抜け出す頃合いだ
実のところどうすればいいのかわからなかった
彼女に声をかけられて
シャワーを浴びたほうがいいわ だなんて
もう逃げられない
ご老人から愛想を尽かされない限り
約束したんだから
牛の搾乳
言ってやろうじゃないか
恐がらせてやる
それ、大声で
好きなんだ フィデル・カストロ 髭がいいな
リタは気味悪がって
所在なさそうにしていると
音を立てて降りてきた親父が
耳慣れないことが聞こえたぞ
フィデル・カストロが好きだ
聞いたとおりだ
すばやくかわす
親父の全力のパンチ
リタが何か声を出した
おかあさんとか何とか
親爺のパンチは冷蔵庫に命中
殺してやるとわめいている
さっさと出て行け
3秒は待たない
非国民
医者のくず 赤ネズミ
リーダーズ・ダイジェストが飛んでくる
頭めがけて 俺は走った
とんぼ返りだ
親爺の手には銃
窓をぶち破り
時速100マイルで
飛び降りたあの速さ
花壇の花に着地
戻ってよ とリタ
弾を込め始める親爺
日が昇り始めて
必死に逃げる俺
戻れるもんか
顔も出せない
リタが家を出て
モーテルの仕事についたとしても
親爺はきっと待ち伏せしている
一本気で 内にこもって
俺を連れて行くつもりだ
FBIへ
はしゃいで足を踏みならす俺
恩を感じて喜ぶ俺
発言の自由もない俺
窮地に陥る俺
わたしがおいてきたもの
真紅の炎の紐がわたしの両耳を突き抜け
高くなびく そして強力な策略が
炎とともに飛びかかる浄火の道
様々な観念を地図としながら
「崖っぷちで僕たちは会うことになる、遠からず」わたしは話した
堂々と厳しい顔で。
ああ、わたしはあんなにも年老いていた
今はあのときよりずっと若い。
ほころび偏った知識がしゃしゃり出て
「すべての憎しみを破り捨てろ」わたしは声を張り上げた
人生を黒と白で説明する嘘を
わたしの頭脳が語っていた わたしが夢見た
昔の銃士の作り事のような話には
どうやら深い意味があったんだ。
ああ、わたしはあんなにも年老いていた
今はあのときよりずっと若い。
向かう道に少女たちの顔が連なり
見せかけの嫉妬もあれば
古代の政治を暗記するのもいた
伝道者の抜け殻に突き落とされ
いずれにせよ ぽかんとしているだけ。
ああ、わたしはあんなにも年老いていた
今はあのときよりずっと若い。
誰が教授に選んだんだ 口先の
真剣すぎて馬鹿にするのもお気の毒な
滔々とした弁舌 自由は
学校においては平等と同義だ
「平等」とわたしは口に出してみた
結婚式の誓いの言葉のように。
ああ、わたしはあんなにも年老いていた
今はあのときよりずっと若い。
兵士の姿勢で わたしは手を突き出した
雑種の犬同然の教師たち
怖がるものか わたしが説教し始めたとたん
自分自身を敵に回すことになるからといっても
わたしの細道を先導するはしけは
船尾から船首まで反乱のただなかにいた。
ああ、わたしはあんなにも年老いていた
今はあのときよりずっと若い。
護衛はたてていたんだ あまりの高貴さに
訳わからず恐ろしくなり
わたしは思い違いをした
わたしには守らなければならないものがあると
善と悪、この述語の定義はわたしには
きわめて明確で疑問の余地もないものだった。
ああ、わたしはあんなにも年老いていた
今はあのときよりずっと若い。
わかんないよ(他人のふりかい)
わけがわからないって
さっさと出て行っちまって
壁の前に置いてきぼりの俺
どんなわけだよいったい
彼女はもう行った
わかるはずもないか
激しく燃えて一晩中キスしていたのに
一生忘れないはずだったぜ
朝はまぶしいよ もう
生きた心地がしないよ もう
見たこともないって顔をしているぜ
こんなことは初めてだ
ミステリーのようだ
神話のできごとかと思う
どうしたって思えない
本当に同じ女
今朝まで一緒にいたあいつと
夜の暗さに夢を落としてきた
それともまだ夢を見ている
声をかけてくれよ
あの声で話してくれよ
見たこともないって顔をしないでさ
機嫌が悪いのなら
なぜそう言わないんだ
そっぽ向くことはないと思う
こりゃ確か
気持ちはずっと離れて
とりあってもらえそうにもない
めくるめく夜を過ごした
彼女のささやきがまだ耳に残っているのに
でもこれははっきりしちゃったな
これはどうにもならないな
見たこともないって顔をされては
あれこれ考えるより
口に出したほうがいいようだ
してみたことの数々
もう潮時だとか
ここが悪いとか
口で言われればすぐに引っ込みます
ギターを弾くとスカートがひらひらして
唇は濡れてつやつやしていた
何かが変わって
もう前の彼女じゃない
見たこともないって顔をしている
もう行くよ
旅に戻る
話すことはもう何もない
でももしそのほうがいいのなら
俺も君と同じに
知らんぷりをきめこむよ
どうやって忘れたんだ と誰かに聞かれたら
俺はこう言う 簡単さ
別の誰かと仲良くなって
見たこともないって顔をすればいいんだから
Dの嘆き歌
かつて人を愛した 褐色の肌の
無垢の子羊 いたいけな子鹿
得々と愛を求めた私 もう彼女はいない
いつだったか去っていった 移ろう季節とともに
そよ風の初夏 こっそり連れ出した
彼女と母と姉 密やかに暮らしていた
それぞれが過去の重荷に苦しんでいた
罪の意識が私たちの前に立ちふさがっていた
姉妹の妹を好きになった
生来の感受性 独創に長けていた
いつでも罪を引き受け 縛られていた
まわりの嫉妬の目
妹を食い物にする 姉は好きにはなれなかった
退屈な生活 自分を守るだけのプライド
まわりがさまざまに想像するのを
自分と世間をつなぐ支えにしていた
私を 私のしたことを 誰も許せない
私が求めた変化 なじめるはずもなかった
彼女を手放さないためのいくつもの嘘
できるはずもない夢の中の生活
自分の気持ちもわからないまま 惹かれていた
豪華な暖炉 夢が乾涸らびるのに
気付かずいつの間にか逃げ込んでいた
愚かにも愛という言葉に安住して
表に現れない腹立ち でっち上げられた穏やかさ
中身のない返事 伝える気持ちのない話
斃れた者の墓には何も刻まれない が 声が聞こえる
何の因果だ ほかにすべはなかったのか
予言どおりの現実がやってくる
悪夢のような終わりのない連鎖爆発
夜の深みで王と王妃が
何もかもほうり投げ粉々にする
何という悲劇 姉は叫んだ
かかわらないで なんて人なの 出て行って
私は殻に閉じこもり 背を向けた
平凡さゆえに崩れた彼女の心に思いを馳せていた
裸電球の下 漆喰の壁を揺らして
姉と私の言い争いが続く
間に彼女 騒音の犠牲者
悲しみの中で子供のようにすぐ疲れ果てて
みな終わり みな過ぎ去り もうどうでもいい 潮時だ
一度ならず声を詰まらせ 崩れ込んだ まわりが涙でぼやけた
ずたずたになった心で 夜の道に這い出た
愛の燃えかすをすべて置き去りにして
風が窓を打ち 部屋までが濡れている
詫びる言葉は まだ見つからない
何度も思いだしては 彼女とめぐりあった人が
かけがえなく思ってくれるよう望んでいた
友の獄窓からの手紙に
自由だというのはどんなにいい心持ちだろう
私の返事は きっと理解されないだろう
空を飛ぶ鳥も航路という束縛から自由にはなれない
人違いだよ ベイビイ
窓からそっといなくなれ
早足でものろのろ歩きでもご自由に
役には立てないようだよ ベイビイ
俺なしでも何も困らない
誰かを探していたんだろう
弱みを見せない強力なやつを
守ってくれて支えてくれて
お前が間違っているときでさえも
どんなドアでも開けてくれるやつ
人違いだよ ベイビイ
違う 違う 違う 俺じゃない ベイビイ
俺はあんたが探している人間じゃないよ ベイビイ
ひさしをつたって静かに出て行け ベイビイ
庭には静かに下りるんだ
役には立てないようだよ ベイビイ
俺なしでも何も困らない
誰かを探していたんだろう
離れないと約束するやつ
お前のことに目をつぶってくれるやつ
お節介はしないやつ
お前のために死ねるとか
人違いだよ ベイビイ
違う 違う 違う 俺じゃない ベイビイ
俺はあんたが探している人間じゃないよ ベイビイ
夜の暗闇に溶け込め ベイビイ
俺の心は石のかたまり
どうやっても動かせない
でもひとりぼっちってわけでもない
誰かを探していたんだろう
落っこちるたびにすくい上げてくれるやつ
地道に花を集めてくれるやつ
電話すると必ず来てくれるやつ
生涯の恋人 って言葉どおりのやつ
人違いだよ ベイビイ
違う 違う 違う 俺じゃない ベイビイ
俺はあんたが探している人間じゃないよ ベイビイ